不気味な程に晴れた日でした。なのに私はぞくりとしてしまう程に寒く、両手で腕を数回擦りました、それで凌げるほどに寒さは優しくはなかったのですがただ本能的に、で御座います
「」
旦那様の物腰柔らかく優しさ溢れる言葉は私に確かに聞こえ、声のする方へと足音を忍んで参ります。旦那様は私が側に来て深く頭を下げると頭を一つ、撫でられました。緩やかに面をあげれば旦那様は笹の音を後ろに灯を受けながら微笑まれおりました。私は叶わぬ恋というのを忘れ、旦那様を前に涙が溢れそうでした。鈴虫の声がして、肌寒さに悟られぬよう身震いをすれば困ったように微笑まれ、小さく「おいで」と申されます。どうすればいいかも分からず戸惑っていますとこちらに向き直った旦那様が両腕を伸ばし後頭部にそっと触れると頭を倒します。何かに当たった、と思えばそれはとても温かく心地よくて、旦那様の胸に抱擁されておりました。鈴虫が笹と重なるように歌を奏でております
「…ここは何処なのでしょうか」
ただ見たこともない世界に立ち止まり、道行く人々を見送りしかありませんでした。皆様、とてもせわしなく歩いていたり、手首を見ています。時折、私の方をとても冷たい目で一瞥なさると何事もなかったかのように歩を止めずに進みます。何だか地面が灰色でとても硬く、辺りは四角い箱でいっぱいです。ただは起きたら此処にいただけで何がなんだかまったくわかりません。もう朝なのに、早く旦那様の朝餉を用意しなくてはならないのに。こんな奇怪な場所にはいたくないのに
眠りから覚めるとあなたがいなくて