まきこむんじゃない。まきこんじゃいけないよ。お前はどんなに願っても一般人なのだから。マフィアという血塗られた社会にお前のような小鳩が飛んできても平和の象徴として迎えられるのではなく鬱陶しい羽虫として出迎えられるのだから
そう、教えられてきたからあたしは彼の手を掴まずに払いのけた
その行動が信じられなかったのだろうか。スクアーロは呆然とあたしを見つめてくる。やめて、そんな顔をしてあたしを見ないで(決心が揺らぐ)声を出そうとしたのか。口を開けかけたのであたしは思い切り叫んでやる。あなたの声をあたしの声でかき消して
そうしてあたしが背中をむけてスクアーロから逃げたときだった。結構、早い部類に入るあたしの脚力全快で、これでもかってくらい頑張って走ったときだった。耳に入る音といえば風をあたしが貫くのと、自分の嗚咽くらいだ
「」
ぴたりと足が止まってしまう。どうして、どうして止まっちゃうのこの足は。動いてよ、ねえったら!
あんなに小さな声で、名前を呼ばれただけなのに音量は最大に思える錯覚。スクアーロが駆けてくる。逃げなきゃ、にげなきゃいけないのにこの足は、いったい何を彼に期待しているというのだろうか。街は息絶えてしまって灯りなんてどこにやらどこにやら。廃墟と化したこの場所で、すべてが始まり終わりを告げようとしているこの場所で
スクアーロ、あなたはあたしをどうしたいの
幸せに生きて笑って死にたいだけなんだ