何をしても駄目な子で、私は思い切り泣いた
どうしてこう育ったのでしょうか肉無き海賊よ
死を贈る海賊が陽気に唄を紡ぐ
私はリズムにのり勢いよく大海原に飛び込んだ!
がたんがたんがたんがたん
役にたたなかった道徳と倫理を棄てて踏み切りに飛び込み自殺をした女がいた。その女は以前にも、まあ自殺ではないのだが自殺に近い病死であった。私が言うのもなんだが哀れな女である。死体の顔など見飽きるほど見てきたがいつ見てもこの女は嫌な顔をしている。何も達成出来ず不幸ばかりが付き纏っている顔だ
嗚呼、彼女の魂を再び新たな命にすることへの躊躇いが生まれてしまう。哀れだ、生まれてもまた不幸にまみれて死ぬ運命と決まっているのに…
もう傷付きすぎて魂がこんなにも弱々しい、ならばいっそ力を与えてみようか。これ以上、せめて殴られてしまうことなきよう…
一人が好きなわけじゃない、ただ怖いだけだ。共にいて裏切られることが。暗い夜道に座り込んで真っ直ぐに広がる道を眺める
何を想う、何を考える。突き刺されるのはいつだ。囁く声に気付くのは私であれるか
覚めない悪夢だ。この世界など地獄以外のなんであるか。この世界こそが地獄なのである
「う゛おぉい、いい目をしてんなぁ、あんたぁ…」
疑心暗鬼でありながら人見知りが激しい上に幸福なく不幸を纏う私の唯一の特徴は眼球に宿る悪魔とか、そんなモノを見る力だけ
「死神の匂いがするぜぇ、それにアンタの中身も闇より深い漆黒だぁ!」
ぼんやりと夜道で飛び交う悪魔を何度も見たことがあるし話をしたこともある。だが皆が言う、口を揃えて
「死神の寵愛を受けた私が恐ろしくないの?」
「ああ?死神の寵愛だぁ?」
悪魔は長い銀髪を風に靡かせ上から私を見下した。私はその海に似た色の青に生唾を飲む。なんて綺麗な瞳なんだろう、唾液が分泌されていくのを感じた
「…ああ。死神があまりの不幸を哀れに想い、手を加えたっていう…」
悪魔は一人、私を見下しながら記憶の戸棚から目当てのモノを見つけたみたい
「雲雀も人がいいよなぁ…まぁ、テメーから出てる負と死のオーラはまるで地獄の使者みたいなもんだからなぁ」
悪魔はそこまで言うと手を目の前に突き付けてきた。海を纏った悪魔はそのまま私を見つめてくる。輝く海の色に危うく私は飲み込まれそうになった
「随分とおもしれーなぁ…」
ただ見上げる私の手を気付かぬうちに握りしめ悪魔は不適に微笑みを称えた
「お前を俺の花嫁にしてやる。悪魔の花嫁になんてなりたくてなれるもんじゃねぇ。光栄に思うんだなぁ…」
不幸を纏うのではない。彼女は不幸をひきつけたっ!故に浮上不可能とされる海に沈んだのだ!
(その事実が哀れかは死神と彼女しか知りえない)