「ねえ、一緒だよ」
唐突にが口にしたのは自分の神経を全てそちらに注ぎ込むには十分すぎるくらいの発言だった。何の柄も描かれていないワタリが洗濯をしてくれたばかりのシャツを小さな手がきゅっと強く握った。こちらをじっと見てくる目には確かにまっすぐで、放った言葉が嘘なんかじゃないのが伝わってきたので敢えて「突然どうしたんですか」とだけ言う。わたしのこの、動揺が声に出ていないことを祈るばかりだ
「あのね、竜崎はね、一人じゃないんだよ」
あまり答えになっていないことを言われて次の返答に詰まる。いつもそうだ。と話しているといつだって急に、心臓がドキリと比喩などではなく跳ねるくらいに確信をついたことを言う。相手の発言から心理を読み解くこと、それは探偵をしていれば見に付く力だし、その言葉に対する反応なども、理解できるようになった気でいた。それなのに
は、わたしの奥に眠るこころをその、透き通った黒の瞳で見透かしてくるものだから、わたしのこころの中にあることを的確に刳り貫いてそれに対する返答を前触れもなく言うものだから、わたしはいつだって彼女の前では狼狽して、なにが世界一の名探偵だ。聞いて厭きれてしまうじゃないか、秀でた知性もずば抜けた頭脳も、才能だってない普通の女性なのに。彼女にあるこの不思議な能力にだけはいつだって舌を巻く結果になる。なんと言えばいいのだろうかと考えて知らずのうちに眉間に皺が寄ってしまったらしい、眉の間に血の通った、ふっくらとした指が触れて息を呑むことになる
「あたしと竜崎はいつだって一緒なの。それだけ伝わればいいの」
「一方的ですね」と反論をやっと返したのに彼女はその答えを予測していたように楽しそうに笑うのだ。なんて楽しそうに笑うのだろう、だけは守りたい、とふわっと花が咲くのと同じくらい少し時間をかけて柄にもないことを思わせる、人のこころを動かす、それが彼女の力だ
「いいの、一方的じゃないし。もう決まってるの」
「なんで決まってるんですか」
「あたしがそうしたいって思ったから竜崎は叶えてくれる。だから決まってるんだよ」
それを一方的と言うんですよ、と言おうとしたがやめた。反論を許さないというように今度は身体をこちらに預けてくる。薄い布越しに伝わる心地よい体温にわたしも相手に寄り添う。死の予感だとか、ふつふつと沸き起こる恐怖をは容易く打ち消すことが出来る、わたしにはない能力だ、きっとキラにだってこんな能力はない。一定の呼吸音に自分が安堵するのがわかって何故か笑えた
By the side of all the time