水が流れている。止めどなくそれは流れ続けている。一滴などというものでないのだからただ無駄に流れていくのはやはり勿体ないと思って蛇口に手をかけようとした
実際のところ、この部屋の蛇口は宝石みたいなのがついてて自室の物などよりも格段に高価なものなので普段からあたしはあまり、触らない。壊したくないし恐れ多い気がしてならない(哀しい庶民出の性よ!)つうかなんで宝石がついているのか分からない。まったくもって、分からない
きゅっきゅっきゅ・・・
この締める時の音と流れる水、そして蛇口の冷たさは自室のものと相違ない。きちんと締めるとただ流れていくだけの、無意味な存在は出てこなくなった
「なにしてんだ」
「いや水が出っぱなしだったんで締めてあげたんだよ」
洗面所のライトは何故か暗いというか、とにかくその時のあたしにはそう感じられた。それもザンザスがエロい空気を放っているのが悪いんだ!(そう見えるあたしの方がよっぽど)
「いいんだよ」
すらっとした美脚で歩み寄る男はあたしと少し身体が触れ合う距離に来て(心臓がバクバクいってる!)長くてあったかい大好きな手で蛇口をひねる。また水が流れる。嗚呼、勿体ないたらありゃしない。あたしはザンザスの手に自分のを重ねてみた。温かくてちょっとごつごつと骨が出ているこの男の手が大好きだ
「いや勿体ないよ」
あんた水道代を馬鹿にしてはいけないよ。ときには桁が三つじゃなくなってしまうんだから。あたしなんか電気代もせかせかと節約してるのに、さ。大体において意味もなく水を出しっぱなしにするのが分からない
「全部流しちまいたいんだ」
「え、それどういう意味・・・?」
ザンザスはこちらをじっと見てからちょっと考えるような顔をしてからこちらをニヤリと笑って見るときゅっ・・・と蛇口を捻った
「でどういう意味なのさっきの」
「嫌いなモノが多いってことだ。がかわりに忘れさせてくれ」
え、なにそれどういう意味なのかさっぱり分からないんだけど
言う前に私の大好きな手に捕まえられてベッドルームに運ばれた
生命の源を簡単に捨てるあなた