そいつは以前よりも随分と痩せていて骨と皮しかないとはこの事を言うのだろう。目は濁りきってて底が見えない。俺はこいつを見たことがある(本当に変わってしまった)

「とりあえず食え」
自宅に連れてってそこらにある物で簡単にパスタとサラダを作るとこちらをじっと見てきた。チラチラと料理と俺を見てくる
「食え」
もう一度言うと恐る恐る口に含んで噛み始めた。段々と口に詰め込むスピードが上がっていく。ほろほろと涙まで流し始めてやはり苦労してきたんだな、と確信した
、お前どうしたんだよ」
それだけでも俺が言いたい事は十分伝わったらしい
「捨てられた」
それだけ言ってまた口に含み始める。前はこんなにフォークを掴む手は骨張ってなかった
「自分の爪食べたりいろいろしたよ」
食べ終わったは呑気にも飲み物を要求してきて根底は変わっていない事に安堵した。キッチンに向かいミネラルウォーターをコップに並々と注いでやる。勢いよく呑む姿は見ていていっそ清々しい
「駄目だね、ここまで育ててもらったけど無理だよ。食事なんか一週間はまともにしてない」
「そっかぁ…」
の家はどっかが欠落してる。だからはいきなり食べ物もらえなかったり殴られたりしてる(ノイローゼの一種だと言ってた)
学生時代に足に広がる無数の痣を見て絶句した(わざわざ見えなくなるような場所に!)
「スクアーロ」
名前を呼ばれて慌ててそちらを向く
「有難う、行くね」
それだけ言うと「ごちそうさま」と呑気な事言って席を立つ
「待てよぉ。お前、これからどうすんだよ」
「家に帰るよ」
「家政婦以下どころか人とさえ思ってないあそこにかぁ?」
ぐっとが唇を噛締めたのが分かった。血がつぅと流れていく
「仕方ないよ」
「俺の家にいろよ」
「迷惑そこまでかけられないよ」
モノクロの笑顔なんかしなくてもいんだけどなぁ…そんなに頼りないか俺は。どんどん歩いてドアに近付いて行く。行くなよ
「誰もいない家だ。お前がいた方が都合がいい」
「でも…」
「なぁ」
戸惑いながら椅子から離れてドアまで歩いてしまったを後ろから抱き締めた。びくっ、と肩をはねるこいつは一体どんなことをされてきたのか考えたくもない。その思いに拍車をかけるようにがほろほろとまた泣いた。肩も足も震えている
「なぁ、行くなよ。いくなよ…」
みっともなく懇願する俺が強く抱き締めると腕の中でポキリと想いが折れる音がした



(あたしもうなにもいらないからあなたがいればいんだよ、言われて俺も震えてしまった)