私自身、良い人なんかじゃないと声を高らかにして言える
誰かを好きになって、誰かを助けて

そんなの私が可愛いから







爆ぜる炎が、白い雪が。辺りが橙に染まる
馬のいななきと怒声。働かない頭だが足を動かすぐらいは出来るようで
私の手を懸命に引っ張るいつきちゃんのおっきな瞳からぽろぽろと涙が流れてる。私は握られた手を強く握りしめた

姉ちゃんは、ここに、いるだっ…」
震えながら、いつきちゃんは確かに言った
膝が震えてる。目の前の少女は私を村から少し、離れた場所まで導くと足を燃える村に向ける。私は小さな手を掴んだ

「い、行かないよね?!戻らないよね!」

口から出た言葉はやけに高めで。自分の顔が見えたならきっと、私は見ないことにしたくなる。それぐらい、酷い顔だろう

「っ…あそこはオラ達の村だ!まだ残ってる人だっているだ!!姉ちゃんは早く逃げろ!これはオラ達の問題だ!!」

掴んだ手は振り払われる
私は、ただ、一人になりたくなくて、彼女を
ひきとめたのだ

いつきちゃんが私を見る瞳はそれを見抜いていた
あんなにも幼い子に縋り付き、必死に自分を守ろうとする私を見抜いていたのだ
それはどんなに恥ずべき行為だったろう。体中が熱くて仕方ない
自己嫌悪に陥っている間にも叫び声は止まない

何で、なんで私こんな場所にいるのよっ!


自分の叫びにフッ、と何かが囁く



『それってどっちの意味なの…?』



逃げたくて仕方ない
私はただの、大学生で。運動も苦手で
よく授業サボるし気分屋だし我が儘だし。だけど、だけど

「いつきーっ!!」


変なこだわりみたいのがあるみたいなんだ